scene#10 永遠を少しだけ
こんなにも仲の良いボクらでも一度くらいは喧嘩をしたことはある。恋人同士の喧嘩の原因はとても些細なことだとよく耳にする。だから始めはボクもそれだと思っていたけれど、実は彼女にとっては積み重ねられたもので、まったく気づかずに彼女の心を幾つも傷つけていたのだった。それでも、しばらく彼女は何もなかったかのように笑顔でボクに接してはいたけれど、ある日、それが限界に達した時があった。
「君はボクがいなくても、やれば出来る子だから大丈夫。」
何の話題からボクはこの言葉を口にしたのか今はよく覚えていない。しかし、これを聞いたとたん、さっきまで笑顔だった彼女の顔が一瞬にして曇った。その表情だけは今でもよく覚えている。
「私はあなたが思うほど強くなんてないの。そういう、一見やさしそうな言葉が、華奢な私のここを切り刻むんだ・・・」
と、彼女は両手を胸にあてて涙顔でボクに訴えかけた。
「永遠。と、までは言わない。でもそのほんの少しだけでいいから一緒にいてほしいと、あなたは思わないの?」
未来のことを話すのを嫌う彼女。でも、永遠を求める。そんな矛盾とも思える行動の理由は、この時にはまだ、ボクには理解することができなかった。