scene#07 雪の匂いと音
電車に乗ってしばらく経つと、窓の景色に賑やかさがなくなるのと同時に、乗客の数も減って車内は寂しくなっってくる。そういえば、まだ、どこへ行くのか彼女から聞かされていない。
近くのボックス席が空いたので、ボクら二人はそこに座った。ボクは気を利かせて進行方向とは逆向きの席に座ると「そこは私の席!」と、彼女はボクを向かいの席へ追い払った。
「逆方向だと気持ち悪くならない?」
というボクの問いかけに
「そう? 私はこっちの方が好きだなぁ。ほら、小さい頃に車でお出かけしたときにね、後ろの席で・・・」
と、彼女はクルッと向きを変えてボックス席に膝から乗って、背もたれの上に手をかけて見せた。
「・・・こうやって、後ろの窓からの景色を見たことってない?」
恥ずかしいからやめなよ。と、ボクが言うと、そのままの格好で足をバタつかせ、頬を膨らまして口を尖らせた。まるで子供だ・・・。
「ねえ、どこまで行くの?」
「んとね。雪の匂いと音を感じられる場所。」
と、また彼女は不思議なことを言う。
そして、背中を仰け反らせて、ボクの顔を見て笑った。
ふと、窓の外を覗くと雪がちらついていた。